141012 日曜 フラッシュ・ボーイズ読んだ。

マネー・ボール」「ライアーズ・ポーカー」などの著作で知られるマイケル・ルイスが HFT (高頻度取引)を題材に書いた「フラッシュ・ボーイズ」の和訳が発売されたので早速買った。面白くて一気に読みきった。

フラッシュ・ボーイズ 10 億分の 1 秒の男たち
マイケル ルイス
文藝春秋
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今年の 3 月くらいに原書が発売されてまだ日本語訳が出ていなかったので「英語で読んでやろう!」と意気込んで買ったものの早々に挫折していたのでようやく読めて嬉しい。

それにしてもこの日本版の装丁はちょっとあんまりだと思う。もう少しまともなデザインにできなかったのだろうか。僕が購入した時点では原書の装丁はこんな感じだった。

今は違うみたいだけれども。

Flash Boys
Flash Boys
posted with amazlet at 14.10.12
Michael Lewis
Allen Lane
売り上げランキング: 3,214

こんな内容の本

端的に言えば、高速な回線で取引所にアクセスできれば他の投資家(一般人に限らず、投資銀行ヘッジファンドなどの大口も含む)に先回りすることで薄く利ざやを稼げるという話。アメリカでは取引所(日本でいう東京証券取引所大阪証券取引所など)が数十の単位でたくさんあり、それらの複数の取引所で同じ銘柄の株式が売買されている。

もし同じ株式に違う値段が付いていたとしたらどうなるか?すぐに、「安い取引所で買って高い値段が付いている取引所で売る」という確実に利益をあげられる取引(裁定取引アービトラージ)を行う投資家が出てきて、値段のずれは 0 に収束して同じ値段になる。

安い値段が付いている取引所で大勢の人が「買いたい!買いたい!」と注文を出しているならその取引所での値段は上がるし、高い値段が付いている取引所で大勢が「売りたい!売りたい!」と注文を出していればその取引所での値段は下がる。買いたいという注文よりも売りたいという注文が多ければ値段は下がるし、その逆もまた然り。

例えばある取引所でマイクロソフトの株を 100 万株売りたいという注文が出たとすると、その取引所ではマイクロソフト株の値段が少し下がる。数字は適当だけれど 80 ドルから 79 ドルに下がるとする(売り手としてはできるだけ高い値段で売りたいので値段が下がるのは嬉しくないけれど大量に売ろうとするときはある程度下がるのはしょうがない)。

複数の取引所で売買されているということは他の取引所でも(恐らく)もっと小さな規模で、例えば 1,000 株単位などで売ったり買ったりしている人がいるということ。そうすると、 100 万株の売り注文が出た取引所で 79 ドルで 1,000 株買って、別の取引所で 80 ドルで買うという人を相手に売れば 1 ドル x 1,000 株で 1,000 ドルの利益になる。

この方法は一番速く他の取引所まで注文を届かせることができる人だけが利益を上げられる。だから、この方法を使う高頻度取引業者は取引所のサーバーのすぐそばに自社のサーバーを置くことを重視する。これは取引所の方でそういう需要があることを認識しているので「取引所内にサーバーをおけるスペース」を販売している。これをコロケーションサービスという。

また、高頻度取引業者のように「速い回線でアクセスできる人」にとってはある取引所と別の取引所が物理的に離れていればいるほど注文が届くまでの時間差が発生するので他の投資家に先回りすることができて都合がいい。

少し端折って書いたけれど大筋では間違っていないと思う。多分。他にも注文の情報をどの取引所に送るかを決めるルーターの話とか公開された取引所ではなく私設の取引所(ダークプールという)の話なども関わってくるので実際はもう少し複雑になる。

では、他の投資家は一部の高頻度取引業者に食い物にされるだけなのかというとそうではない、なぜなら……という話が本書「フラッシュ・ボーイズ」では描かれている。しかもこれは現在進行形の話なので今後どうなるかも気になる。

フラッシュ・ボーイズ 10 億分の 1 秒の男たち
マイケル ルイス
文藝春秋
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ちなみに

マイケル・ルイスの「世紀の空売り」「マネー・ボール」も面白かったのでおすすめ。

世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)
マイケル ルイス
文藝春秋 (2013-03-08)
売り上げランキング: 1,430