Drug Delivery System( 薬物送達システム )

日経新聞からのメモ。薬を体内の狙った場所に届ける薬物送達システムという投薬技術があるらしい。
通常の抗がん剤は全身にくまなく行き渡るため、正常細胞も攻撃してしまい、副作用を起こしやすい。がん細胞だけに薬を効かせたいという狙い。

「高分子ミセル」という新方式のカプセル(東京大学の片岡一則教授ら)

がん細胞は栄養を取り込むために周辺に新しい血管をつくる(血管新生と呼ばれる働き)。ただ、この血管は急ピッチで作られるため、 100 ナノメートルほどの隙間が複数できている。

ひも状になった百本ほどの高分子で抗がん剤を包み、20-100 ナノメートルの球状にする。これを血管に投与すると上記の隙間をすり抜けて、がん細胞の周辺に薬が集まる。カプセルは時間経過で崩れるようになっており、抗がん剤が放出される。

高分子の構造の一部を変えることで、カプセルが崩れる時間をある程度制御でき、がんの種類に合わせてカプセルを設計することもできる。

また、生体に本来備わっている働きで、薬ががん細胞に届くと、異物として細胞膜に包み込んで薬の効果を打ち消してしまう。それを利用した、さらに高度な方法では、カプセル中にあらかじめ光に反応する物質を入れておき、がん細胞にカプセルが取り込まれた時点で光を当てることで、がん細胞の中に薬を放出することができる。

がんだけを浮かび上がらせ、診断にも利用できる(片岡教授)

上記の光を使う方法のほかに、温度の変化でカプセルを崩して薬を放出する手法もあり、セ氏 40 ℃を境に低温だと水溶性、高温だとゼリー状に変化する高分子をカプセルに組み込む、とのこと。

「フルオロカーボン」という有機化合物でできた液状の小さな球を使用する手法

これも高分子ミセルのカプセルと同じ原理で患部周辺に集まる。そこで外から超音波を当てると、体積が 100 倍以上に膨らみ、シャボン玉のような泡になる。(この泡を超音波で探すことで、がんを発見できるらしい)
さらに別の超音波を当てると、泡が破裂してセ氏 70-80 ℃の高温になり、がん細胞をやっつけることができる仕組みだそう。すごいな。

(追記)
この技術 DDS はナノテクノロジーの代表的な応用例として注目されているらしい。そして日本が世界をリードしている研究分野だそうだ。ますます頑張ってほしいな、と思う。